2026年4月は生成AI3強の力学が一気に動いた1ヶ月でした。Anthropicは 4月16日にClaude Opus 4.7 をGA、OpenAIは 4月23日にGPT-5.5 を発表して翌日にAPI開放、同じく 4月24日にはGoogleがAnthropicに最大400億ドルの追加投資 を発表しました。これだけのイベントが2週間に詰まると、料金表もベンチマーク表も読み方が変わります。本記事は、現役PM視点で「で、これ実用に耐えるの?」だけを測るために、公式数値だけで3モデルを横並びにします。
結論:用途別の使い分けはこう変わった
細かい比較に入る前に、忙しい読者向けの要約を先に出します。
- 長文処理が多いなら Claude Opus 4.7 / Sonnet 4.6:1Mトークンまで標準価格、長コンテキスト割増がない
- 巨大な探索・推論で外したくないなら GPT-5.5:Terminal-Bench 2.0 で82.7%、SWE-Bench Pro 58.6%、FrontierMath Tier 4 で35.4%
- 大量バッチで安く回したいなら Gemini 2.5 Flash / Flash-Lite:100万トークンあたり$0.10/$0.40(Lite)、Batch APIで50%引き
- マルチモーダル+Google Workspace連携が必要なら Gemini 2.5 Pro:Google Search統合とDeep Researchが現実的に強い
「全部やりたい」なら3社契約が現実解です。実装する前にAPI単価と長コンテキスト割増の有無を必ず読み込んでください。あとで効いてきます。
1. 価格表の比較(API・1Mトークンあたり米ドル)
2026年4月時点の公式単価です。Anthropic/OpenAI/Googleそれぞれ 長コンテキスト割増の閾値が異なる ことに注目してください。実装の総コストはここで決まります。
| モデル | 入力 | 出力 | キャッシュ入力 | バッチAPI | 長コンテキスト割増 |
|---|---|---|---|---|---|
| Claude Opus 4.7 | $5 | $25 | 最大90%引き | 50%引き | なし(1Mまで標準) |
| Claude Sonnet 4.6 | $3 | $15 | 最大90%引き | 50%引き | 200K超で長コンテキスト価格 |
| GPT-5.5 | $5 | $30 | $0.50 | $5/$30 | 272K超で2x入力/1.5x出力 |
| GPT-5.5 Pro | $30 | $180 | — | — | 同上 |
| Gemini 2.5 Pro | $1.25 | $10 | $0.125–$0.25 | 50%引き | 200K超で$2.50/$15 |
| Gemini 2.5 Flash | $0.30 | $2.50 | $0.03 | 50%引き | — |
| Gemini 2.5 Flash-Lite | $0.10 | $0.40 | $0.01 | 50%引き | — |
典型的な詰まりポイントは「議事録要約・契約書レビュー・大規模コードベース探索」のような長文タスクです。Anthropicが1Mまで割増なしで通すのに対し、OpenAIは272K超で実質2倍、Googleは200K超で2倍。50万トークンを毎日100回処理する想定でAPI見積もりをすると、3社で月額が逆転します。「常時長文ユースケース」がメインの組織は、Anthropicの料金体系がそのまま効く局面が増えました。
2. コンテキストウィンドウとリリース日
| モデル | コンテキスト | 最大出力 | リリース日 |
|---|---|---|---|
| Claude Opus 4.7 | 1M | 128K | 2026-04-16 |
| Claude Sonnet 4.6 | 1M(GA、3/13より標準価格) | — | 2026-02-17 |
| GPT-5.5 | 1,050,000 | 128K | 2026-04-23(API 4-24) |
| GPT-5.5 Pro | 1,050,000 | 128K | 2026-04-24 |
| Gemini 2.5 Pro(GA) | 1M | — | 2026年GA安定版 |
| Gemini 2.5 Deep Think | — | — | 2025-08-01(Google AI Ultra限定) |
1Mコンテキストはもはや「3社揃って当たり前」になりました。差別化要素は 料金モデルとthinkingの売り方 に移っています。
3. ベンチマーク(公式発表値のみ)
各社の公式ブログ・ドキュメントが出している数値だけをまとめます。海外メディアの独自テスト値(Vellum等の2次ソース)は採用しません。空欄は「公式が当該ベンチで公表していない」を意味します。
| ベンチ | Opus 4.7 | Sonnet 4.6 | GPT-5.5 | Gemini 2.5 Pro |
|---|---|---|---|---|
| SWE-bench Verified | (Opus 4.6比3倍解決) | 76.3%(thinking off) | — | 63.8% |
| SWE-Bench Pro | — | — | 58.6% | — |
| Terminal-Bench 2.0 | — | — | 82.7% | — |
| GPQA Diamond | — | 90.2% | — | 84.0% |
| HumanEval | — | 92.3% | — | — |
| MATH | — | 93.2% | — | — |
| MRCR v2 (1M) | — | — | 74.0% | — |
| FrontierMath T4 | — | — | 35.4% | — |
| Expert-SWE | — | — | 73.1% | — |
| CursorBench | 70% | — | — | — |
| Finance Agent | 0.813 | — | — | — |
| CyberGym | 73.8 | — | — | — |
| LiveCodeBench V6 | — | — | — | SOTA(Deep Think) |
| IMO 2025 | — | — | — | Bronze〜Gold(Deep Think) |
注意:Anthropicは公式ブログで具体的なMMLU/GPQA/MATH値をOpus 4.7については公表していません。代わりに「Opus 4.6比3倍解決」「CursorBench 70%」「Finance Agent 0.813」のような独自指標を出してきます。Opus 4.7のスペック表を作るときに「公式に出ていないMMLU値を埋める」のは2次ソース由来になり、エンジニア読者には簡単に見抜かれます。空欄のままにしてください。
4. 機能対応表
thinkingモード、ツール使用、Computer Use、Web検索、Artifacts、プロンプトキャッシュ、エージェントランタイム。「で、何ができるか」を1枚で見るための表です。
| 機能 | Opus 4.7 | Sonnet 4.6 | GPT-5.5 | Gemini 2.5 Pro |
|---|---|---|---|---|
| Thinking/Reasoning | adaptive(xhigh含む5段階) | extended/adaptive | reasoning effort 5段階(xhigh含む) | thinking budgets |
| ツール使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| コード実行 | ○ | ○(web検索と併用で無料) | ○(hosted shell/apply patch) | ○ |
| Computer Use | ○(高解像度2576px) | ○(人間並み水準) | ○(built-in computer use) | △(Deep Researchで間接) |
| Web検索 | ○(dynamic filtering) | ○GA | ○ | ○(Google Search統合) |
| Artifacts | ○(Claude.ai) | ○ | × | × |
| プロンプトキャッシュ | 自動(2/19〜) | 同上 | 自動・24時間 | context caching |
| バッチAPI | ○(300k出力上限) | ○(300k出力上限) | ○ | ○ |
| ファインチューニング | × | × | × | × |
| MCP対応 | ○ | ○(Excel等) | ○ | — |
| エージェントランタイム | Claude Managed Agents(公開β) | 同上 | — | Deep Research Agent |
ファインチューニングはどのフラッグシップも非対応です。「自社データで賢くしたい」場合は下位モデル(Haiku、GPT-4.1 mini、Gemini Flash等)になります。フラッグシップでFTを使う想定でアーキテクチャを書くと、後で詰まります。
5. 1Mコンテキストの料金モデルが3社で割れた
本記事で最も実務に効く論点はここです。3社のスタンスは以下のように分かれました。
- Anthropic:1Mまで標準価格を維持。長コンテキスト割増なし。Sonnet 4.6は2026-03-13に1Mを正式GA
- OpenAI:272Kを境に 入力2倍/出力1.5倍 の長コンテキスト価格に切り替わる
- Google:200Kを境に $1.25→$2.50(入力)/$10→$15(出力) に切り替わる
例えば 「30万トークンの議事録を毎日100本処理する」 用途で月額試算すると、Gemini 2.5 ProとOpus 4.7で総額が逆転する可能性があります。GeminiはProの基準価格こそ最安ですが、長文では割増が効きます。Anthropicは入力単価では割高に見えても、長文割増がないため累積で安く着地することがある。実装前に「平均トークン長」と「ピーク長」を出してから単価を見直してください。
6. thinkingの「売り方」の差
3社ともthinkingモードを持っていますが、商品設計が違います。
- Anthropic:adaptive thinking一本化。Opus 4.7では固定budget設定が廃止され、xhigh effortまでの5段階に整理。「モデルに任せる」前提
- OpenAI:reasoning effort 5段階を開放。「自分で調整する」前提
- Google:Deep Thinkを上位サブスク(Google AI Ultra)に隔離。「上位課金で別モデル」型
エンタープライズが「思考予算をプロダクト側で握りたい」のか「モデル任せにしたい」のかで採用が分かれます。プロダクトマネージャーとして見ると、OpenAIの細かいコントロールは魅力ですが、運用ガバナンスが甘いとコストが跳ねます。Anthropicの「お任せ」設計は楽ですが、想定より思考が深く回ってトークンが膨らむこともある。Geminiは「上位課金で別モデル化」なので予算管理は最も明快です。
7. エコシステム経済の変化(4月24日)
同じ4月24日に、GoogleがAnthropicに最大400億ドルの追加投資(初期100億ドル+マイルストーン300億ドル)を発表しました。同日Anthropic公式は Google・Broadcomとのパートナーシップ拡張 を告知。AnthropicはGoogle TPUとAWS Trainiumを併用するマルチクラウド型に振れます。
OpenAIはAzureベース、GoogleはGemini 3を控えています。読者の所属企業が どのクラウドベンダーと既存契約しているか で、AIモデル選定の自由度が変わってきます。技術選定の議論は「モデルのベンチ」だけで完結しなくなりました。営業窓口、データ移転、コンプライアンスまで含めて見ないと、半年後に困ります。
8. 渡の評価:で、これ実用に耐えるの?
3モデルとも「実用に耐える」というレベルは超えています。問題は どこで耐えるか の使い分けです。私の現場感覚では、当面以下のように振り分けるのが現実的でした。
- コードレビュー・PR自動化・大規模リファクタリング → Claude Opus 4.7(CursorBench 70%・SWE-bench強い)
- 本気の探索・調査・複合的な問題解決 → GPT-5.5(Terminal-Bench 2.0 82.7%・FrontierMath T4 35.4%)
- 大量バッチ・要約・分類タスク → Gemini 2.5 Flash/Flash-Lite(圧倒的に安い)
- Google Workspace中心の組織 → Gemini 2.5 Pro(Workspace連携)
- 長文処理が常時発生する組織 → Claude Sonnet 4.6(割増なしの1M)
1モデルだけで全部やろうとせず、複数を併用してください。月額数万円でも、結局は使い分けた方が安く速く正確に着地します。
まとめと次に試すべきこと
2026年4月の3社比較で押さえるべきは 「料金体系の差」「thinkingの売り方の差」「エコシステム再編」 の3点です。スペックそのものは横並びになりつつあるので、料金と運用ガバナンスがそのまま選定の決め手になります。
次回はClaude Opus 4.7とClaude Codeを実際に1ヶ月触ってみたレビューを掲載します。Anthropicが4月23日に出した品質低下ポストモーテムの解説と、その後のアップデート(PowerShellツール対応、`/ultrareview`、xhigh effort)を含めて、現場で使い倒した結果をまとめます。
参考リンク(1次ソース)
- Introducing Claude Opus 4.7 — Anthropic公式
- What’s new in Claude Opus 4.7(公式ドキュメント)
- Claude API release notes(公式)
- Introducing Claude Sonnet 4.6 — Anthropic公式
- Introducing GPT-5.5 — OpenAI公式
- GPT-5.5 Model — OpenAI Developers Docs
- Gemini 2.5 model family expands — Google Blog
- Gemini API pricing — ai.google.dev
- Gemini 2.5 Deep Think — Google Blog
- Anthropic expands partnership with Google and Broadcom — Anthropic公式
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